日本のレゴ文化を一変させた「TVチャンピオンレゴブロック王選手権」

忘れられそうな今だからこそ「TVチャンピオンレゴブロック王選手権」を語っとく

2018年のレゴブログ「アレゴレNEXT」では、アメブロでやっていた旧「アレゴレ」のアーカイブを公開していく予定です。
アーカイブでは、加筆訂正しデジタルリマスター(なにが?)として蘇えりますので、ご期待ください。
そこで、第一弾はある意味で日本のレゴ文化を一変させたともいえる一連の「TVチャンピオン」記事を復活させようと思います。
……が、すでに「TVチャンピオン」って何?と思われる人も増えてきました。
また、よく考えたら第一回について何も書いたことないな……とも。
そこで、まずは伝説の第一回について、いろいろ書いていこうと思います。
きっと時効なので、いろいろ裏話も書いてしまいましょう!

レゴブロックにおける「TVチャンピオン」とは?

そもそも「TVチャンピオン」とは、「誰にも負けたくないものがある」というコンセプトに、さまざまなジャンルの強者が集まり、ナンバー1を決める番組です。
テーマは毎回変わり「食品サンプル王」とか「包丁職人」をはじめ、かなりニッチなジャンルまで開催されました。
恐らく一番有名なのは「大食い選手権」で、数々のスターを生み出し、番組終了後もなお独立して企画放送され続けています。

そんな番組に、あるとき「レゴブロック王選手権」が開催されることになりました。
メンバーは、秋長さちこ、けんたっきぃ、川崎あずむ、佐々木信幸、栗岡の5名。
出演者は公募する時もあるのですが、今回はクオリティ重視ということで、コンテストの受賞歴があり、ブログなどで連絡先が公開されている方を中心に集められたようです。

特に第一回は、テレビなどで「レゴ先生」的な出演をされていた、けんさんにアプローチがあり、紹介によってメンバーが集められたようです。
そのため、出演者が全員知り合いという、見ている僕にとっては一種異様な雰囲気に包まれた番組になりました。
何はともあれ、撮影開始とともに少しづつ情報が流れ始め、「できれるわけねーよ!」的な過密スケジュールの中、出演者たちは地獄に叩き落とされていたのです。

レゴブロック王選手権には、通常のテレビチャンピオンと異なる特殊事情がいくつかあります。
たとえば、お題を撮影現場だ知らされて「その場のアドリブで作る」ことは難しいです。
通常、大食い選手権では、現場で「牛丼勝負」と言われても、とにかくたくさん食べるだけです。
以前、もえあず(大食い女王)にインタビューしたのですが、食材は知らされていないようでした。
ですが、レゴブロックの場合、事前にテーマも知らされず、その場で何かをつくるようなことは、「パーツの準備」ができないため無理があります。
もちろん、当時主流だった「青バケツ」や「赤バケツ」という商品セットを使って作るという方法はあります。
しかし、今度はクオリティの問題が出てきます。

たとえば包丁細工選手権であれば、大根からでも「スゲー!!」って思う作品を削り出せます。
しかし、「青バケツ」や「赤バケツ」でパンダを作れといわれても、「ああ、パンダっぽいね」みたいな作品しかできません。
もちろん、飴細工のように、リクエストを受けて「ささっ!」と作ればカッコイイかもしれません。
ですが、テレビ映えするクオリティがあるかというと疑問です。

また、さらにテレビ的にも、例えば「青バケツ」や「赤バケツ」を使った動物勝負を言えば、赤青黄色のパーツ主体のセットですから「全員がインコ」を選ぶ可能性すらあります。
これでは、面白みがありませんよね。

ですから、結果的には「その場でお題」→「現場でアドリブ制作」のような演出はありますが、ある程度は事前に準備する必要もあるのです。
もちろん、お題は決まっていても、作るは現場が初めて……というパターンもあるので、それほどウソではないんですよ。
むしろ、スタッフの方々はこの特殊事情を加味して、視聴者が一番楽しめる方法をとっているのです。

「TVチャンピオンレゴブロック王選手権」1R前半

そして、いよいよ放送開始です。
リアルタイムで見るべく、仕事をさっさと切り上げてTV前でスタンバイ。
放送が始まると、見慣れた顔が続々と登場します。
第一回のお題は「動物」勝負。
選手一人ひとりが紹介され、作品づくりの過程が紹介されます。
私の好みで作品のデキを選ぶと、秋長さんのコアラと、あずむさんのクジャクがよかったです。
特に、クジャクの羽表現が素晴らしく、テレビ前で唸らされました。
秋長さんのコアラは「続 つくって遊ぶブロック玩具で遊ぼう」に、作り方の一部が紹介されています(画像は掲載時のものです)。
ビルド技術としては、栗岡さんのインコも最近では定番になる「貼り合わせ」的な工法が紹介されてよかったと思います。

レゴコアラ

なお、審査員にはレゴモデルビルダーの故直江和由さんや、動物園の人などです。
実は直江さんが審査員をやっているのは、第1回と3回のみで、
なぜか僕の出ている2回、4回、5回には審査員をやらないという因果関係があります。
それはともかく、ビルダーの視点、動物園の園長の視点などから、いろいろ審査が行われ、前半の順位が確定します。

「TVチャンピオンレゴブロック王選手権」1R前半

後半は、「インテリア」勝負です。
レゴブロックを使ってリアルに使えるインテリアを作るというチャレンジングな企画です。
この勝負では、あずむさんのレゴ盆栽のような「春遠からじ」がよかったと思います。
ですので、拙著「ブロック玩具で遊ぼう!!」でも、同系列の作品をお願いして制作してもらい掲載させていただきました!
画像は、その一例です。
佐々木さんの札束でぶっ叩くようなクリアパーツだけでつくった「クリスタルハウスも面白い試みでした。

レゴ盆栽

そして、1Rの結果としては、けんたっきぃ師匠がまさかの脱落。
前半では栗岡さんか最下位だったのですが、後半で巨大な水槽をつくり逆転を果たしました。
この水槽、意外と凝っていて見ていて華やかです。
画像は、呑み会に持って来てくれた魚のモデルです。

レゴ魚

もともと、栗岡さんといえば巨大モデルという印象があるのですが、インテリア勝負という意味でも、一番趣旨に沿っていた気もします。
けんさんの作品もっと見たかったなぁ。

「TVチャンピオンレゴブロック王選手権」2R

2ラウンドは「トリックアート」勝負です。
実は、元々はトリックアート勝負ではなかったらしいのですが、
オスカーさんから出された作品コンセプトが「トリックアート」的な内容で、途中で変わったとの裏話を聞いたような聞かないような。

いずれにせよですが、この勝負スゴかった!
本当にスゴかった!
「お前らの頭の中はどうなってるんだ?」って問い詰めたいくらいスゴかった。
何が一番かと言われれば、佐々木君の「野口漱石」表と裏を変えるだけで、同じ作品から違う絵柄が見えてくること。
どんな設計をすれば、できるのかホント不思議です。
いずれにせよ、テクニックブロックの穴のあるなしを使うことで表現しているのですが、それを考えついたことが凄いです。
なお、画像は本邦初公開の佐々木くんのアイデアラフです。
貴重な資料だったので、写真を撮っておいたのですが、こんなところで役に立つとは!

テレビチャンピオンラフ

また、秋長さんの「マジック・オブ・ネイチャー(自然の魔法)」 も断面が四季を変えるという超絶不思議構成。
オフ会で設計図を見せてもらったあと、せがんでコピーをいただいた記憶があります。
いや、下手したらコピーじゃなくて、そのものをくれたかも。
もちろん、今でも家の奥底に大事に取ってあります!(場所がわからないだけだい!)

なお、結果は本アイデアを提案した栗岡さんの脱落という展開。
でも、これまでの見当に拍手です!

「TVチャンピオンレゴブロック王選手権」決勝

決勝戦は、当時レゴの聖地であった那須ハイランドパークの「レゴスタジアム(ミュージアムだったかも途中で名前変わった)」。
決勝は24時間くらいかけて、1メートル四方の作品をつくるという理不尽な企画。
しかも、冬の寒ーい那須でやるなんて、大変というか地獄ですね。
ですが、まさかこの時、この地獄がテレチャンレゴの名物になるとは……。
内容は「びっくりレゴタウン」と称して「テーマパーク」的な内容の作品をつくること。
三者三様で、どの作品も素晴らしかったと思います。

秋長さんの「お子様ランチ」をイメージした「真っ赤な車のびっくりタウン」
これは、赤いワーゲンをベースに、フタをあけると遊園地みたいのものがあります。
鉄道も通っていたり、遊び心満載な作品でした。

そして、佐々木さんの男の遊び心満載な「レゴ・スペースタウン」。
マインドストームなどを使って宇宙ステーションを回転させたり、磁石パーツを使って無重力チックな配置をさせたり、ビルダーとしては見所満載です!

レゴスペースタウン

最後はあずむさんの「ムシキング」や「こえだちゃん」などをモチーフにした「ブルーム・セントラル・シティ」です。
こちらはアシスタントに第三回に登場した中原さんを迎え、最強の布陣で臨みます。
作品としては、面白いギミックが随所にあり「子供が喜ぶだろうなー」というデキ映えです。

審査は、特別審査員と一般審査員の投票を経て行われ、
結果は、秋長さんの「」が初のチャンピオンに輝きました。
ツッコミどころとしては、最初から「サプライズ女王」という二つ名になっていたので、優勝が決まっていたかのような部分でしょうか(笑)
しかし、秋長さん曰く、この作品をつくるのに「貯金が吹っ飛んだ」というくらいの物量が使われていますし、綿密なリサーチとターゲット(審査員)に合わせた作品内容です。
なので、勝つべくして勝ったのだと思います。

なお、放送中に佐々木君が「完璧やぞ!」とコメントしますが、最終的に負けてしまったことから、レゴコミュでは「死亡フラグ」として認定されています(笑)
余談ですが、佐々木君はこの最終決戦の模様をビデオ録画しており、制作現場の裏側がバッチリわかります。
そのビデオをコピーしてもらった記憶はありますが、こちらも家の中で行方不明です。
なんといっても、VHSなのが災いしていますw
さらに、余談ですが、この最終決戦について、佐々木君とあずむさんに語ってもらったビデオが存在しています。
こちらは8ミリビデオか、DVビデオで録画したのですが、こちらも行方不明です。
なんか、凄い裏話がたくさんあったので、発掘したら公開したいですね。

ちなみに、審査に参加した一般審査員は、現地に来た人たちで行われています。
そのため、決勝の開催を知った知人も行ったようなのですが、現場スタッフに「お断り」されて後ろでみていただけのようです。
ちゃんとしてますねー。

「TVチャンピオンレゴブロック王選手権」アフター

最初に書いたとおりですが、この「TVチャンピオンレゴブロック王選手権」が、これまであったすべてのルールを書き換えた気がしています。

これまで、レゴブロックの仕事は、基本的にレゴジャパンがやっていました。
しかし、出演者にはワークショップの依頼だったり、作品制作の依頼だったりが発生するようになり、趣味の領域であったレゴブロックが仕事になり始めました。
これにともない、大きい作品をつくることも増え、パーツの購入単位が100単位から1000単位へ、1ケタアップした気がします。

また、放送後に商品の売り上げたアップしたことから、2回、3回と制作されることになり、知名度のあるレゴコミュニティーメンバーも増えました。
たとえば、現在レゴプロとして活躍されている三井くんもテレビチャンピオンに出演することがなかったら、あるいはレゴプロになっていなかったかもしれません。

僕もその一人で、第二回の出演をきっかけに「本」を書くことになりました。
自画自賛になりますが、僕の本で育った若い世代も結構いるのです。
そして本の発売をきっかけに故直江和由さんと親交を深め、それが伝説の「ブリックファンタウン」につながり、WOWWOWやレゴ世界遺産など、レゴ社とのコラボイベントが行われる流れを生みました。

僕の勝手な思い込みもあるとは思いますが、「TVチャンピオンレゴブロック王選手権」は日本におけるレゴコミュニティの恩人的な偉大な番組だったと思います。
制作スタッフと出演者、それらを支えた人たちに大感謝です!
……あ、でもテレチャンなければ、もっと平和な人生を送れた気がするかも(笑)

次は、アレゴレアーカイブ「TVチャンピオン第二回レゴブロック王選手権デンマークへ行っちゃうよ決戦」の話(デジタルリマスター)です。

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